当地は、昭和５３年(１９７８年)に「大津市瀬田南大萱町****番地」から「大津市大萱*丁目**番**号」のように「住居表示」に切り替わった。しかし、私が昭和６１年に転入してきた時の土地売買契約書には「大津市大萱＊丁目字鬼入＊＊＊＊番地」とある。この「鬼入」が小字である。当時は全く気が付かなかったが、後日近隣の「椋井川」に橋が架けられ、その橋の名前が 図１ のように、「鬼入２号橋」「おにいり２ごうきょう」だったのである。土地の人に聞くと「おにで」と言うとのこと、どのような謂れがあるのだろうか、未だ解決していない。

いくつか小字を紹介しよう。「四ノ坪」「五ノ坪」「七ノ坪」は８世紀中頃に整備された条里田の区割りを今に残している。「広葭(ひろよし)」「田葭」「蓮原」「小葭」は琵琶湖岸に近い水田地帯で、大萱の地名とも関連深い。「北川尻」「南川尻」「南川崎」「惣魞(そえり)」は長沢川の河口付近の小字である。「奈良田」は東大寺の荘園だったとか。『南大萱の地名』

小字は、極めて小さな区画の特徴を的確に捉えた名称なので、中近世の土地利用の様子を読み解くヒントになり、大事にしたいものである。